【創業融資】金融機関ごとの違いについて(後編)

2021年6月1日 6:55 pm

 

こんにちは、独立・開業・創業融資支援センターの公認会計士・税理士の安藤です。

 

年間100件以上の創業融資サポートをしてきた私が、「創業融資において利用できる金融機関ごとの違いやそれぞれメリット・デメリット(後半部分)」についてお話しさせていただきたいと思います。

 

今回の記事は前回の続きとなります。

 

前半の記事を読んでいない方は、下記リンクをご覧ください。 

 

 

この記事を読むとこんなことが理解できる!!

  • 公庫と信用保証協会のそれぞれのメリット・デメリットについて理解できる
  • 民間金融機関が融資を行う条件=保証協会付き融資、制度融資について理解できる
  •  

    融資対象の法人や個人に過去実績がない場合でも、民間金融機関が融資を行う条件とは?

     

     

    融資借入を行った人がお金を返済できなくなった際に、都道府県ごとに設置されている信用保証協会が債務のほとんどを民間金融機関に対して保証する、つまり民間金融機関にとってリスクが少ない状態であれば、貸付を行うこともあります。

     

    つまり、保証協会からお金の借入をする、というのを正確にいうと「県や市の信用保証協会から保証を付けてもらった上で、民間金融機関から資金調達を行う」ということになります。 

     

    制度融資について

     

    制度融資とは、基本的には上記で述べた「信用保証協会付き」の融資と実態はほとんど同一のものとなりますが、県や市(地方自治体)が関わり、利用者の利息の一部を補填してもらえることが大きな違いとして存在します。

     

    こちらの制度はとりわけ創業を考えている人たちにとっては大きな壁となる資金調達のハードルをグッと引き下げることで、起業促進を行っているものとなります。

     

    3者同士がそれぞれ協調しあって行う

     

     

    ①地方自治体(都道府県や市)→預託金として銀行に資金を元手の一部となるよう民間金融機関に預け、利用者が有利な条件で借入ができるようにサポートする。

     

    ②信用金庫協会→民間金融機関への保証を行い、利用者→銀行への返済不履行が生じた場合に代位弁済(債務を代わりに負い金融機関への返済を行うこと)を行う。

     

    ※ただ注意点として、利用者の債務はなくなりません。

     

    これは民間金融機関が融資額を返済されないリスクを抱えた条件では基本的に貸付は行いたくないという方針を、リスクを負わせないという条件付けをすることで緩和するためのものです。

     

    つまり、地方自治体が開業促進目的や資金調達のハードルを下げるために、万が一債務者の返済が滞った際に、地方自治体が債務者の代わりに銀行へ補填をするという条件で(銀行にはリスクが極端に少ない状態)銀行が特別に融資を認めているニュアンスのものになります。

     

    ですので、銀行から個人or法人に対しての債権対象が保証協会へと切り替わるだけで、保証協会→個人or法人への債権は存在し続けますので、当然ですがきちんとお金は返していかなければいけません。

     

    ③民間金融機関→定められた条件に従い、融資を実施する。

     

    創業融資においての公庫or制度融資(信用保証協会)、優れているのはどちら?

     

     

    結論からいうと、どちらが絶対的に優れているということはありません。

     

    次からは、創業融資においての両者のメリット・デメリットを考えていきたいと思います。

     

    申込手続きの手軽さ

     

     

    日本政策金融公庫>制度融資

     

    理由→制度融資は前述のように金融機関・地方自治体・保証協会が三位一体となって融資支援を行うものであるため、申込手続きが煩雑になりがちです。

     

    かといって日本政策金融公庫の申込手続きも、創業計画書や収支計画表を仕上げていかなければいけないので、それなりに事業のビジョンがしっかりと固まっていないと思ったより時間がかかってしまいます。。。

      

     

    融資対象者のゾーンの広さ

     

    日本政策金融公庫=制度融資

     

    公庫の創業融資制度を使いたい場合は、開業前or税務申告を2期終えていない法人or個人事業主が対象のため、創業して間もないタイミングで申し込まなければ対象になりません。

     

    制度融資は開業後5年とリミットがゆっくり設定されているので、一見有利に見えますがですが、公庫でも創業融資制度以外の融資商品がありますので、そこまで違いはないかなと考えています。

       

    自己資金要件

     

     

     

    日本政策金融公庫=制度融資

     

    日本政策金融公庫の自己資金要件は、最低でも借入希望額の3分の1を自己資金として持っていなければ申込み対象を満たしませんでしたが、基準が10分の1まで引き下げられました。

     

    制度融資はたしかに自己資金要件は存在しないのですが、両者とも自己資金がほとんどないorゼロだと、融資を受けることが相当厳しくなりますので、私の経験ではどちらも同程度かなという感覚です。

     

    開業分野に対する職務経験

     

     

    日本政策金融公庫=制度融資

     

     

    こちらに関しても、開業予定の分野に対する経験が例えばゼロである場合には、よほど元々の自己資金が豊富であるという優位性がない限り、どちらにせよ融資は厳しくなってしまうので、同程度かなという印象です。

     

    借入上限額 

     

    日本政策金融公庫(支店決済は1000万円、本店決済は3000万円)<制度融資(3500万円)

     

     上記が借入限度額なので、一見公庫の方が有利なように思えますが、あくまで3000万円というのは公庫の本店決済を通過した場合の話です。

     

    基本的には公庫では、開業予定の土地の最寄りの店舗にて面談を受けることとなるので、その場合の上限は基本的に上限1000万円までとなります。

     

    本店決済が必要となる場合のハードルは格段に厳しくなりますので、こちらは単純に数字の比較では語れない部分となります。

     

    ただ実際に保証協会付き融資でも上限額いっぱいまで借りれることは稀ですので、実態としての上限額は両者同じくらいといったところでしょうか。

     

     

    申込時の許認可の必要性

     

    日本政策金融公庫=制度融資

     

    両者とも原則として事業に必要な許認可を受けていることが必要条件となりますが、許認可をきちんと受ける予定があれば、申込時の有無は問われないため、どちらも同じかなという印象です。

    返済期間(元本据え置き期間・担保の有無などについて)

     

    設備資金・・・公庫(20年以内)>保証協会(10年以内)

     

    運転資金・・・公庫(7年以内)=保証協会(7年以内)

     

    元本返済据え置き期間・・・公庫(2年だが実質1年以内)=保証協会(1年以内)

     

    担保・・・公庫(不要)=保証協会(不要)

     

    保証人・・・公庫(不要)>保証協会(法人は代表者が連帯保証人に、個人事業主は不要)

     

    金利・保証料

     

    金利・・・公庫(2%)=保証協会(2%)

     

    保証料・・・公庫(なし)>保証協会(借入時の一括支払いの条件で借入額より数%が引かれる)

    全体のスピード感・融資通過後の入金タイミングの早さ

     

    日本政策金融公庫>制度融資

     

     

    公庫は全体の流れが1ヶ月ほどで全て完了し、設備資金・運転資金ともに一括入金、かつ口座入金も迅速です。

     

     

    保証協会は全体の流れが2-3ヶ月ほどかかることがあり、設備資金の入金が遅れることがある、入金自体も公庫より遅めな傾向です。

     

    借りやすさ(審査の通りやすさ)

     

    上記で比較してきた数字上の差というのは確かに存在しますが、実際にどちらかで借りる場合の借りやすさというのはないのが実際のところです。

    両者のどちらも、融資判断で重視する点はやはり、

     

    ①自己資金

     

    ②CIC=個人の信用情報に問題がないこと

     

    ③経験

     

    ④創業計画書や面談の内容

     

    上記となりますので、一概にどちらが借りやすいというのは存在しません。

     

    最後に

     

    できるかぎり簡単に説明してきましたが、上記の記事を読んでも、「数字的な比較は分かったけど、結局自分の状況では公庫と保証協会どっちを利用するのが正しいかわからない」という方もいらっしゃると思います。

     

    安藤総合会計事務所は「独立・開業・創業融資支援センター」を運営しております。

     

    次のような方はぜひ当センターまでお越しください

    • 数字的な比較は理解したが、自分が公庫と保証協会どっちを利用すればいいのか判断がつかない
    • 融資全般のことを詳しく聞きたい
    •   

      年間100件以上の創業融資サポートをしてきた私が、懇切丁寧にサポートを行い、融資確率を上げるお手伝いをさせていただきます。

       

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